過去からの抵抗

戦前戦中・敗戦直後の人々の反戦・不敬発言を紹介。

1937年8月分 反戦・不敬発言傑作選  24事例

 

支那事変に対する左翼分子の策動其の他

 

1 

青森県 反戦的策動 東北文学社同人 田中常二 外七名

八月一日の反戦デーに際し青森県碇ヶ関に名をピクニックに借りて会合し 

(イ)今後県内四ヶ所に毎月研究会を開催するの方針の下に之に関する各責任者の分担を決定し 

(ロ)来月以降「東北」文学には反戦的題材を選定登載すること 

(ハ)反戦的題材の作品を石黒劇団をして上演せしむること

等を協議決定し反戦的行動に出づ。  

(八月四日関係分子十四名を検挙し目下治維法違反被疑事件として取調中)

 

 

 

2

 新潟県 反軍的言動 新潟県刈羽郡柏崎町 後備歩兵伍長 後藤茂夫(34)

七月二十二日柏崎町本町四丁目喫茶店「タカラ」に於て飲酒中居合せたる者数名に対し目下新潟県下に於て実施中なる簡閲点呼予行演習に付き

今回の点呼は甚だ面白くない、如何に重要時局なりとしても一回の点呼に三、四日も予行演習をやる必要が何処にあるか、点呼とは名前を答えればそれで充分だ、何も猛烈なる訓練をせなくとも点呼の意義は判る云々」と反軍的言動を洩したる事実あり。

(厳重戒告)

 

3

 静岡県 反戦言動 静岡県清水市江尻紺屋町 金物行商 草ヶ谷寳作(46)

七月十五日行商の為静岡県庵原郡袖師村嶺牧田長吉方に至り同家に居合せたる同人外数名に対し

日本が支那と戦争をしても支那にはソ連が付いているソ連には共産党と言う確りした団体があるから日本は負けるに決っている、ソ連では労働者が死ぬと政府で葬式を出してくれるが日本ではそんなことは無い、戦争が始まると貧乏人は不景気で食えなくなるから困る早く戦争を止めて貰いたい、戦争は人を殺すから反対である云々」と反戦言辞を弄す。

(静岡県憲兵隊に引渡し目下同隊に於て陸刑違反として取調中)

 

4

 大阪府 反戦反軍的落書

七月末施行の京阪神地方防空演習に際し大阪市大正区大正防護分団本部団員控室として使用せる大正尋常小学校内教室の黒板に

「出征兵士負けて帰れ、後に来るもの貧民の生活難」

との反戦反軍的落書あるを発見す。

(厳探中) 

 

 5

広島県 反戦落書

広島県海田市省線海田市駅構内共同便所内に

「資本家の手先となった新聞、ラヂオ、映画等で外国が悪い様に宣伝して戦争をしかけるそして利益は自分等が取る戦地で死ぬのは誰だ、国家の為だのやれ忠義だのとおだてられて機関銃の的となる農民労働者よ云々」

反戦落書あるを発見す。

(厳探中)

 

 6

大分県 反軍的言動、反戦的落書 大分県下毛郡眞坂村 応召兵一等水平 山本勝郎

八月六日応召の為眞坂駅出発に際し見送の小学校長に対し

「自分は今度戦地に赴くが同じ出征する軍人でも職業軍人である将校と三大義務に基く一般兵との間に極端なる待遇上の差異あることは甚だ遺憾だこの際国民もこの点について関心を持たねばならぬと思う、云々」

と反軍的言辞を弄し尚出発の際居村小学校々庭の朝礼用黒板に

「今度の戦争はプロレタリア対ブルジョア階級闘争である 国民は一大覚醒を要する以下不明」

反戦的落書を為したる事実あり。

憲兵隊へ通報、憲兵隊に於ては所属分隊長と共に取調べ戒告せり)

7

三重県 反戦落書 

八月十四日三重県下鳥羽町所在鳥羽電気工作所(軍需品工場)内便所に

「隣国友好国に兵を出すとは正義に反した侵略行為ではないか、日本は未だ反省の余地あり。召集令状動員馬鹿。神鋼哲人」

と落書あるを発見す。 

(内査中)

 

8

宮城県 反戦的ビラ

八月八日仙台市名掛町自転車修繕業石塚哲夫及同町仕立業松本新兵衛方店頭へ西洋紙に謄写版刷せる左記内容のビラ(縦一二、二センチ、横一五、五センチ)各一枚を投込あるを発見せり。         

一、北支皇軍の奮戦○○部隊は二十九路軍をさんざんに破り逃げる事をやむなくしたり 

二、我が新聞記者佐藤公介死せり 

三、皆うそ

宗文社

(厳探中)

 

9

岡山県 反戦的言動 住所不定 縫針行商 椿原萬蔵(56)

八月三日岡山県下和気駅に集合せる応召軍人並その見送人等五、六十名に対し

「戦争をするのは馬鹿だ、学校で勉強しても戦争する様な事では何の役にも立たぬ、戦争すれば日本人は困るばかりだ国民は苦しい目に逢うばかりだ、大体総理大臣が悪い、戦争をする様な総理大臣や陸軍大臣は殺して仕舞え」

と絶叫したる事実あり。

(警察犯処罰令により拘留二十日に処す)

 

※今回の更新の中では私の一番のお気に入り。

 

10

長崎県 反戦的言動 長崎県大浦町食料品販売 山口光太郎 (41)

七月三十一日午前十一時頃長崎市大浦町「ヨーロッパホテル」前街路に於て付近在民婦女子五名を相手に雑談中談偶北支事変に及ぶや

「日本は戦争して折角満州を取ったがその結果税金が高くなり一般のものは却って困っている只一部の者が利益を得る丈でこの点から見ても戦争はするものではない」

と洩したる事実あり。

(戒飭)

 

※この「ヨーロッパホテル」は現存していない様だ。同じ長崎県ハウステンボスには「ホテルヨーロッパ」が存在しているが…。

 

11

神奈川県 反戦的落書

八月五日横浜駅構内便所入口左側手洗所に

「打倒日本」

黒鉛筆にて一寸五分大に太書せるものを発見す。

(内査中)

 

※一寸五分=4.5㎝

 

12

香川県 反戦的言動 住所不定 似顔絵師 川崎義夫 (35)

八月十日午前十一時頃香川県下白鳥本町国鉄白鳥駅事務室に於て同駅駅長小野久太郎外二名に対し

「資本家は税金を出すのみで実際戦争に行って死ぬのは我々の様な下の者のみだ、今度の事変は欧州大戦より大きくなる、支那兵も日本兵も皆死んでしまってから如何に戦争が悲惨なるかを知ればよい、今度の事変は日本の領土的野心から起ったのであるが支那全部を取っても統一は出来ぬ云々」

反戦的言辞を弄す。

(陸刑違反として身柄共送局)

 

13

京都府 反戦的言動 京都市中京区姉小路通大宮東入三防大宮町 牛乳販売 松尾幸二 (25)

八月六日午後七時頃京都市竹谷理髪店に於て同店職人岡田明當二十一年と北支事変に関し談論中同人に対し

「日本軍隊は支那へ領土及権益の侵略に行って居るのである、故に支那人といえども民族意識に目覚めた知識階級の人々は今後如何なることがあっても排日抗日運動に全力を注ぐであろう、それは斯くすることが愛国的行為である、支那の行為は正当防衛である、日本の侵略に対して已むに已まれず戦っているのである云々」

反戦的言辞を弄す。

(厳重戒告)

 

14

島根県 反軍的言動 島根県高津町 職工 信国虎雄 (26)

八月一日石見人絹工場女工が夜間出征兵士を鉄道沿線に於て歓送したるにこれを批難し同僚数名に対し

女工の癖に晩遅く迄騒いで居るなんて女は女らしく早く寝るがよい、出征兵士だからとて騒いで送る必要はない、朝の仕事に差支える様な遅くまで見送りしなくとも早く休むがよい云々」

と反軍的言辞を洩す。

(厳重戒飭)

 

※「反軍的」発言をする者も必ずしも高い意識を持っていなかったと見れる良い例だが、状況から言って中々難しい。

 

15

警視庁 反戦的言動  矢崎弾こと 神藏芳太郎

八月七日淀橋区角筈寶亭グリルに於て開催せられたる同人雑誌「星座」の例会席上(出席者一六名)

「日支事変の原因は相互の政策が悪いからだ双方今一歩進んだ考を以て行ったなら戦争をしなくとも幾らでも和平的に解決が出来たことと思う、もう世界は終りだ、今回の日支問題をきっかけに世界は必ず二派に分れて第二の世界大戦まで進むと思う、それからこの際日本主義者即ち「ファショ」を徹底的に撲滅して仕舞わねば日本主義者の為に日本は滅びて仕舞う云々」

反戦的言辞を弄す。

(検挙取調中)

 

※矢崎弾は有名な文芸評論家。12月には人民戦線事件でも検挙。

 

16

新潟県 反戦ビラ貼付 

八月十八日新潟県下七日町字上栗、角山金治方物置小屋及同部落道路指導標に墨筆にて半紙に横書せる左記内容の反戦ビラ貼付ありたるを発見せり

1.北支上海事件支那軍万歳 日本軍滅敗、我々は支那軍絶対擁護 大戦争反対、支那空軍我国攻撃万歳

2.支那とは争い反対だぞ、日本敗戦だ 我々は大いに支那後援するぞ 日本政府の手段反対だ 我々は一丸となって日本やるぞ。

(本件は共産主義運動の戦略戦術たる「自国敗戦主義」を宣伝したるものにして犯人厳探中)

 

17

静岡県 反戦的言動 静岡県浜名郡新津村 法枝 二、一五九 書報外交員

八月八日夜浜松市海老塚町カフェーオリンピックに於て飲酒中居合せたる堀敏明當二十三年に対し

「今度の事変は日本が支那の土地を取る為に始めたのだ。日本の貧乏人は幾ら働いても頭は上がらない、これは政治が悪いからで、ロシアの労働者は楽しい生活が出来る様になって居る。弱い者いじめをすれば必ずやられる時が来る云々」

反戦的言辞を弄す。

(厳重加諭始末書を徴す)

 

18

兵庫県 反戦的落書

八月二十日神戸市内新開地、東宝チエン映画常設館「朝日館」内男便所内側白壁に鉛筆にて

「戦争は嫌だ、兵士を救え」

との落書あるを発見す。

(内査中)

 

19

新潟県 反戦的言動 長岡市城内町一ノ七八五 薪炭商 岩淵富八(67)

八月七日、長岡市城内町一丁目町内伍長丸山金一郎が皇軍慰問金寄付募集に関する町内委員会に出席方勧誘したる所同人に対し

「自分の家では二人も軍隊に関係があるがもし出征しても市の扶助を受けないし又他人の世話にもならないから出席する必要はない、又弱い者苛めをする様な戦争は好きでないから委員の相談も出る必要はない云々」

反戦的言辞を弄す。

(厳重戒告)

 

20

愛媛県 反軍的言動 西宇和郡川上村大字川名津甲三五八 農兼土木請負業 田中繁一 (40)

八月十六日以後居村木下峯松外数名に対し

「出征兵士も金儲でただではない骨が折れれば金鵄を貰うこれも金だ」

と反軍的言辞を弄したるを以て村内に於ては皇軍を侮辱するものなりとて憤慨し居るもの多し。

(所轄署に於て召還取調中)

 

※周囲の反応がまさに「戦時」である。

 

21

滋賀県 出征兵士の待遇に対する不平 犬上郡西甲良村大字呉竹同大字小川原部落青年の一部

出征官吏の俸給全額支給に対し

「今度の事変では官吏と言わず百姓と言わず国民はどしどし招集されて暴支膺懲に身命を捧げて居るが出征兵士中官吏のみには俸給の全額を支給されて居るらしいが我々農村の出征兵には何の特点があるのか、同じ出征兵士に何で斯様な差別的取扱をなすのか我々はあまりその間の消息は判らぬが独善的な差別待遇ではないか云々」

と不平を洩すもの漸次増加しつつあり。

(厳密取締中)

 

22

広島県 反戦的投書

八月二日蘆品郡府中町長及府中警察署長に宛て発信人不明の左の如き反戦的投書あり(原文の儘)

「出征前涙ながらに書く一出征兵士です私は妻子五人を残して万感胸にせまりながら明朝出征いたします、私は一日九十銭で労働する一人ですが明日より妻子は米代にも困ります官公職に有る人は俸給全部戴けるに反し我々労働者は何の手当もありません何たる不合理な規定によるか私等にも一日九十銭あれば妻子のことは一切心配せずに勇んで出征しますが只々妻子の不便が心残りで戦死しても死に切れません町長様にも御願いしましたが同じ日本国民でありながら何たる差別待遇でしょうか親族より戴いた餞別も子にやり三円持って涙ながら出征致します心中の程」 

(左翼分子の所為に非ずやと認め内査中(内偵するに文面当該事実なし))

 

23

広島県 反戦的投書

八月八日福山連隊区司令官に宛て発信人不明の左の如き反戦的投書あり(原文のまま)

「無鉄砲なる多数の召集は農村を混乱状態に陥らしめる人心恐々として放火鉄道破壊等内乱沙汰に迄及ばんとする有様であります引ては農事に対する不熱心となり怠情となり又出征軍人家族に対する労力の提供による手間不足も影響して農産物の減収となり農村問題迄も引起すと言う様な趨勢となり不良分子に至りては悪宣伝迄成すものがあります。軍部を非難する声を所々に聞く有様なる故召集は全国各地同程度となし特に未教育召集は成可二十四、五歳の元気盛んなる者までに止められ度、首くくり夜逃等もあらわれました右御参考迄に通知傍々御願い申上げます」

(左翼分子の所為に非ずやと認め内査中)

 

24

島根県 反戦的言動 島根県安濃郡鳥井村応召兵 大野新兵衛

応召に當り居村村議木村信七に対し

今回我々を召集したのは村内の同志全部(本人外二名の左翼分子召集さる)が召集され居る点より見て何等かの圧迫を加ふべく特に人数に入れたものとしか思われない飽迄精神的に圧迫する気であるらしい、滅多なことを言えば戦地で銃殺されるかも知れぬから十分言動に注意しようと思っている云々

と相当不安の面持ちにて語りたる模様なり。